キノの旅 The Beautiful World:読書メモ
世界は美しくなんかない。そしてそれ故に、美しい
―The world is not beautiful. Therefore, it is.―
プロローグ「森の中で・b」―Lost in the Forest・b―
自分が矮小で汚い人間だと感じるとき、それ以外のものがすべて美しく、愛しく思える
それらをもっと知りたくて旅をしている
旅はいつでも止められるから続けようと思う
人生もそう、いつでも死ねるから生きようと思うことは少なからずあるmaichan.icon
第一話「人の痛みがわかる国」―I See You―
人間同士の思いを直接伝えられるようになった結果、滅びの運命をたどることになってしまった国
自分や他人の思うことがすべて筒抜けになり、知らなくてもいいことまで知ることになってしまった
距離を取れば思いは伝わらないので、人々は離れ離れになって暮らしている
人には本音と建前があって、それを使い分けることで良好な人間関係を築くことができるmaichan.icon
第二話「多数決の国」―Ourselfish―
国政のすべてを多数決にした結果、滅びの運命をたどることになってしまった国
多数決で少数派を処刑していった結果、国民が一人だけになってしまった
常に多数派にいた自分が何より正しいと信じていた男は、エルメスの目に「王様」として映ったんだろうmaichan.icon
一見公平な多数決も、少数意見を尊重できなければ横暴な独裁者になってしまうmaichan.icon
第三話「レールの上の三人の男」―On the Rails―
三人の老人が50年間、それぞれお互いの存在を知ることなく「レールを磨く」「レールを外す」「レールを直す」という仕事を続けている
一人の老人がレールを磨き、別の老人がレールを外し、また別の老人が外されたレールを直している
三人の老人は鉄道会社から与えられた仕事を50年間疑うことなく愚直に続けている
自分たちが無駄なことをしているということは、知るべきであるかもしれないと同時に、知らない方がいいのかもしれないmaichan.icon
敷かれたレールの上を疑うことなく歩む人生もまた、レールの外側の人から見れば滑稽に映るのかもしれないmaichan.icon
それでも、自分が幸せならそれでいいと思うけどね
自分の人生は他人にあれこれ口出しされるものではないし、自分もまた他人の人生に無責任にあれこれ口出ししてはいけない
第四話「コロシアム」―Avengers―
キノがとても素晴らしい国だと聞いて訪れた国は七年前の王の交代から一変し、コロシアムで勝負をして勝ち残った人間が市民権を得るという狂気じみた国になっていた
キノは一人も殺さず勝ち残り、決勝で刀使いのシズと出会う
キノはシズとの勝負を制し、流れ弾の体で王を殺害した
コロシアムのある国に来る以前、キノとエルメスは馬車で旅をしている若い夫婦に出会った
兵士が語った「初戦でお互いに当たった夫婦」とはこの夫婦を指しているものだと思われる
次にキノが会ったとき、奥さんは一人だった(奥さんは降参して生き延び、旦那さんは次戦で殺されているため)
そしてキノに、とても素晴らしい国なので訪れるべきだと言った
なぜ奥さんはキノにそんな嘘をついたのかmaichan.icon
キノなら何かしてくれると思った?
すでに狂ってしまっていた?
ともかく、キノは兵士の語った夫婦と旅先で知り合った夫婦を結びつけたはずで、それがこの制度を作った王を殺害するにいたる動機の一つとなったのだろうmaichan.icon
だとすれば、シズだけではなくキノもまた復讐者ということになる
こんな狂った状況で淡々と、しかし楽しみながら目的を遂げるキノもまた、私から見ればどこか狂っているように思うmaichan.icon
第五話「大人の国」―Natural Rights―
キノ(その頃の名前はもう忘れたらしい)が旅に出ることになったきっかけの話
12歳になると大人になる為の手術を受けさせられる国
旅人の「キノ」と話すことで、当たり前だと思っていたこと(大人になる為に手術を受けること)に疑問を持ってしまったキノは、父親に殺されそうになる
エルメスに促され国を脱出したキノは、殺された旅人「キノ」の名前を名乗る
第六話「平和な国」―Mother's Love―
互いの国の兵士の代わりに、近隣の部族を殺害することを戦争としている国の話
長い間戦争を続けていたヴェルデルヴァルとレルスミアは、夫と子を失った博物館館長の提案により15年前から殺し合いをやめ、代わりに近隣に住むタタタ人を殺し、その量で戦争の勝ち負けを決めている
平和は何かを犠牲にした上に成り立っている。昔はそれがわが子であり、今はタタタ人である
犠牲は絶対に自分の子であってはならない。関係のない他の誰か(この場合タタタ人)が犠牲になって平和が保たれるのであれば、それは歓迎すべきことだ
母性に潜む狂気maichan.icon
父性にはそういうのはない気がする
狂気じみているが、それが母になるということなのかもしれないmaichan.icon
それにしてもスポーツ感覚で人を殺すのは全くの狂気としか言いようが無いmaichan.icon
それでも、彼らの中にタタタ人に対する罪悪感が少しでも芽生えてしまえば、また別の戦争が起きてしまうのかもしれない
エピローグ「森の中で・a」―Lost in the Forest・a―
キノはなぜ旅をするのかというエルメスの問いかけ
#キノの旅_The_Beautiful_World #読書メモ
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